阿部 恭子(認定NPO法人乳房健康研究会 理事)
看護師・保健師として、がん専門病院やクリニック、地方自治体やがん検診機関などに所属し、がん検診やがんの治療を受ける患者さんへのケア、さらに終末期のケアに携わりました。現在は、乳がん看護認定看護師を育成する教育コースの教員をしています。ピンクリボンとのかかわりをご紹介します。乳がんの検診や治療と看護の役割
がん専門病院やホスピスで勤務したのち、1997年に習志野市に保健師として入職し、乳がん検診に携わり始めました。当時は、保健センターなどで集団検診(視触診)を受ける方の問診をしたり、検診がスムーズに進むように会場での受診の案内をしていました。老人保健法によるがん検診の最後の年で、翌年からがん検診が一般財源化することになり、慌ただしく次年度の準備をしていたのが印象に残っています。
1998年に、当時の千葉県対がん協会(現在は、ちば県民保健予防財団)に看護師として入職し、5大がんの集団検診・個別検診と精密検査に携わりました。がん検診の精度への関心が高まり、千葉県内でのマンモグラフィ検診が始まった年でした。マンモグラフィ検診で微細石灰化の所見がある場合には、精密検査で針生検やマンモトーム生検を行い、しこりのない早期乳がんが見つかるようになりました。「検診で早く見つかって良かった」という方がいる一方で、「しこりがないのに本当にがん?」と戸惑う方もいて、看護師には、検査や治療のことをわかりやすく患者さんに説明したり、患者さんが病院や治療方法を選ぶのに必要な情報を提供するなど、新たな役割が求められるようになっていきました。
1999年7月から、千葉市にある川上診療所 乳腺・甲状腺クリニックに看護師として勤務することになりました。乳がんの個別検診・精密検査、乳がんの日帰り手術、初発・再発の化学療法や内分泌療法などに携わりました。10月のピンクリボン月間には、乳がん検診を受診する方や乳がんの治療を受けている方、そして、乳がん治療後の定期検診の方など、多くの方が来院されました。スムーズな検査や診療が行われるように、医師・看護師・検査技師・事務クラークなどスタッフ一丸となって悪戦苦闘したのが印象に残っています。
乳がん看護認定看護師とピンクリボン活動
乳がん看護認定看護師は、乳がん看護のエキスパートです。日本看護協会が認定する資格で、看護師は職場を離れて教育機関で6か月以上の研修を受講し、さらに資格認定審査に合格しなければなりません。私は、2005年から現在の千葉大学に移り、日本で初めてとなる乳がん看護認定看護師の誕生に向けて、教育プログラムの実施に取り組みました。現在、乳がん看護認定看護師は、全国で200名を超え、ピンクリボン運動や、乳がん治療を受ける患者さんのケア、さらに乳がん患者会などで活躍しています。
ピンクリボンアドバイザーの誕生
2013年から乳房健康研究会の理事としてピンクリボンアドバイザー制度の準備に加わりました。がん検診の意義や仕組みを正しく理解するのは、実は簡単ではありません。特に、早期の乳がんを的確に診断するのはとても難しいのです。ピンクリボンアドバイザーの皆さんが、乳がんのことを学び、多くの方に乳がん検診の受診を啓発してくださるのを応援するともに、乳房健康研究会の一員として皆さんの活動のお手伝いをしていきたいと考えています
(2015年6月)