嶋森好子 (公益社団法人東京都看護協会会長)
ピンクリボンは、乳癌の早期発見を推進し、乳がんを発見したら、積極的に自分の治療法の選択に関与するよう進めています。乳癌患者は、自らの乳房の手術することに、意見をいうのが当たり前になっています。米国で始まったピンクリボン運動が、日本においても、患者が自分の治療の決定に参加することを推進しています。
医療安全の観点から、医療への患者参加が強調されるようになりました。平成27年10月から“予期しない死産や死亡事故が発生した場合は、院内事故調査を行う”ことが義務づけられました。しかし、その院内事故調査報告書を患者の遺族に渡すかどうかについて、医療者と患者の意見に隔たりがあります。厚生労働省から出されている通知では、報告書を必ずしも渡す必要はなく、患者遺族の望む方法で“説明すれば良い”と言うことになっています。
ピンクリボン活動を推進している人達は、このような考え方を到底理解できないと思います。私も、せっかく院内事故調査を行い、作成した報告書を患者遺族に渡さなくても良いという考えは理解できません。ピンクリボンの考え方から見ると、まだまだ日本の医療の患者参加は遅れています。
私が乳房健康研究会の理事としてピンクリボンに関わる事になったのは、朝日エルの岡山さんから、この活動に参加する様に誘われたときからです。理事として、会議に出席し、医学や看護の学会にピンクリボンバッジを販売するコーナーを設けてもらう様に働きかけたるなど、あまり表だった活動を熱心にしている方ではありません。
乳癌の治療は、特に外見の変化を伴う治療法があるにもかかわらず、その選択に患者自身が参加できなかった歴史があります。ピンクリボンが、患者が自らの病気の治療法を選択する当たり前の権利を、当たり前のこととして医療に定着させました。これに関わる医療者として、常に、患者の声を聴き、自らの治療の選択を支援する様に努力したいと思いっています。
(2016年1月)