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新型コロナウィルス感染症に対する緊急事態宣言と私たちのピンクリボン運動

乳がん・乳がん検診最新情報

認定NPO法人乳房健康研究会理事長 福田 護

 

今年は、乳房健康研究会にとって20周年の節目の年です。そのため、これからの10年の活動を見据えて、様々な企画を予定しました。その一つがオリンピック開会式前日の2020723日に予定していたGlobal Conference on Breast Healthです。乳がんに対する闘いは、世界共通であるとの思いで、企画したものです。新型コロナウィルス感染症のため、11 3日に延期になりましたが、乳がんは世界共通の問題としての考えは変化していません。

新型コロナウィルス感染症のパンデミックは、世界中で価値観や生活習慣を一変させています。そして、私たちは刻々と変化する世界各国の状況をリアルタイムで見て、言いようもない不安や恐怖を感じています。この感染症は、自国至上主義や民族・宗教至上主義に押されてなかなか見えなかった、世界各国が共同運命体であることを、皮肉にも具現化させた出来事になりました。

緊急事態宣言下では、不要不急の外出を避けるように求められています。新型コロナウィルス感染爆発寸前の日本では、各人の責任で不要不急の外出は避ける必要があります。この時期の乳がん検診は、最小限度になると考えています。医療機関により、乳がん検診の対応が異なりますので、ご確認ください。ただ、別の角度から見ると、不要不急の概念も変わってきます。乳がんは、1年間(2017年)で、世界では190万人が罹り、60万人以上が亡くなり(JAMA Oncol. 2019;5(12):1749-1769)、日本では9.4万人以上が罹り(2016 年 国立がん研究センターがん情報サービス)、1.4万人以上が亡くなります(2018 年 国立がん研究センターがん情報サービス)。1年という単位では、乳がんは決して、不要不急な問題ではありません。緊急事態宣言が終了したら、乳がん検診を今まで以上に推し進める必要があります。

新型コロナウィルスの厄介なところは、感染していても自覚症状がないことです。健康な人にも、医療機関で感染する危険性だけでなく、家族、職場、医療機関への感染源になる可能性があります。医療機関に感染が起きると、医療崩壊に繋がります。医療現場は、この感染症の治療で疲弊しているだけでなく、この感染症が持ち込まれる危険性に対して非常に神経質になっています。もちろん、乳房に症状のある人は、躊躇なく受診してください。もし乳がんであっても、今までと変わらない治療を受けることができます。

ピンクリボンアドバイザーは、乳がんだけでなく、科学的、論理的に病気や医療を考える事ができます。その上、人に寄り添う豊かな人間性を持っています。先が見通せない暗いニュース、信頼できないフェークニュースが氾濫する中で、ピンクリボンアドバイザーの信頼できる言動や行動が、多くの方の規範になります。

ピンクリボン運動に関わるすべての人には、ご自身の健康を守り、次の活動に向け力を蓄え、収束後のピンクリボン運動のために備えてくださるようお願いします。