北斗晶さんがご自身の乳がんをブログで公表され、さまざまなメディアで取り上げられています。これに関連して、ピンクリボンアドバイザーにみなさんに質問があったり、また自ら疑問に思うこともあることと存じます。 当会に問い合わせがあった質問を中心に、理事長の福田護が回答をまとめました。
北斗さんが乳がんを公表された勇気に敬意を表します。 病状の詳細はわからないことから、「一般的に同様のケースでは」という回答になることをご了承ください。 ピンクリボンアドバイザーとして乳がん患者さんの質問に答える場合は、責めることなく、よりよい治療にむかって寄り添えるよう努めてください。
Q. なぜ毎年受けていても見つからなかったのか。乳がん検診は受けていても無駄ではないのか。
A. 「対策型検診」では40歳以上、2年毎のマンモグラフィが推奨されています。2年毎のマンモグラフィ検診でも見つからないで、検診の中間に出てくる乳がんがあります。これを、中間期乳がんといいます。 その原因として、以下のようなことがあります。
・発育の早い乳がんである。
・乳腺組織が豊富なため、マンモグラフィで乳がんが隠れて見えないことがある。
・がんが乳房の端にあるため、写る範囲から離れている場合がある。
・写っているに関わらず読影医が見落とすことがある。
乳がん検診で乳がんを100%見つけることは不可能であることを認識しておいて下さい。
Q. 1年に1度の検診受診で、見つからないならもっと頻繁に受ける必要があるのではないか。
A. 対策型の乳がん検診の目的は、検診を受けた集団の乳がん死亡率を低下させることです。2年毎あるいは3年毎の検診で死亡率減少効果を得ることができます。したがって、日本では2年毎(3年毎の国もあります)のマンモグラフィ検診です。
がん検診は、死亡率減少という利益と検診に伴う不利益を天秤にかけ、利益が大きい場合に行われます。乳がん検診の不利益には、偽陽性、偽陰性、過剰診断、精神的不安、マンモグラフィの被ばくや疼痛、時間やコストなどがあります。1年よりさらに短い間隔での検診では、不利益が大きくなり、検診として成り立たなくなります。
なお、乳房にしこりなどがある場合の経過観察は、それぞれの状況に合わせて、1年より短い間隔で行われることがあります。
任意型検診では、受診者の希望や状況に合わせ、1年毎に行う場合があります。
Q. 自己検診の重要性をもっと強調すべきか?
A. 自己検診をすれば、中間期がんを早期に発見されると言い切るのは良くないと思います。自己検診で中間期乳がんが早く見つかった、自己検診に死亡率減少効果があったとの研究報告がありません。また、自己検診による不利益も指摘されています。
「乳がん検診で問題がないと言われても、中間期がんがあるから、自己検診して、自分の乳房に関心を持ち続けて下さい」という言い方が適切かと思います。
Q. 自分のまわりに同様の人がいたら、ピンクリボンアドバイザーはどのように接したらよいのか。
A-1) 検診を受けていたが異常なしだった。しかしそれなりの大きさの乳がんが発見された場合。
その人が、順当に適切な治療を受けていけるようにサポートしてあげて下さい。
A-2) 自分で異変に気が付いているが、検診で「異常なし」だったり、家族に乳がんの人がいないからなどの理由で、診療に行こうとしない人。
その人に、検診ですべての乳がんを発見することは不可能なことを話し、専門施設受診を勧めて下さい。家族に乳がんがいなくても、多くの女性が乳がんになります。
Q. 「発育の早い乳がん」とはどのような乳がんか?『ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』に記載がある「組織型」や「サブタイプ分類」などで、あてはまるものがあるか?
A. 一般的には、トリプルネガティブ乳がんやHER2乳がんの方が、増殖傾向が強いと考えられています。また、Ki-67が30%以上(施設によっては20%以上)の場合、増殖傾向が強い(大きくなるスピードが早い)と考え、化学療法が考慮されます。
Q. 乳頭直下にがんができると、全摘の対象か?
A. 乳頭直下でイコール全摘ではありません。様々な情報を総合して決定します。
Q. なぜ術前化療をしなかったのか?(報道されないだけかもしれないが)
A. サブタイプ、ステージ、腫瘤の正確な位置などの情報が不明であり、分かりません。
Q. 自分で気が付いていたら、もっと早く詳しい検査をうけるべきだったのではないか。
A. 検診はしこりなどの症状がない人が受けるものです。何か症状がある場合は、専門施設で、保険診療で、必要な検査を受けて頂きます。